「子どもの「好き」を大事に」

雨上がりの日は、子どもたちは朝から泥んこ用の服に着替えて園庭に飛び出していきます。
柔らかくなった土の上に乗って、思いっ切りぐちゅぐちゅの感触を楽しんだり、手に乗せてぺちょぺちょ・むにゅむにゅ・・・の感触を楽しんだり、「あんこ、どうぞ」とべっとりした泥を手に乗せて差し出してくれたりします。泥をぎゅっぎゅ!と握って固め、さらさらした砂をかけて少しずつ泥団子を大きくしている子もいます。熟練した子になると、大きくてかたい団子を作るために丁寧にさらさらの砂をかけ、慎重に力を加減しながら丸めます。そんな最中は話しかけてもこちらを向かずにひたすら団子に向き合っ ています。出来上がると大事にプリンカップや箱に入れます。そうなるともう立派な「作品」です。落と して壊れて泣いてしまうこともあります。でも、また次の日に作ればもっといいのが出来る事もある。そして「割れても大丈夫」「またできる」の経験を重ねていきます。何個も何個も作っていくうちに手先の使い方も器用になっていきます。土の湿り具合や砂の量や力の加減を微調整する科学者のような・・・時 には技術者のような目線が素敵すぎて、十分にそんな時間を保証してあげたいと思います。
思う存分させてあげたいのは、そういった活動の中で、子どもが自分の力で体得した宝物のような経験が積み上げられていくからです。心を動かし、頭で考え、体を使って、「土」や「泥」や「水」といった変化し続ける素材を理解していくわけです。
夏に向けて、古くなったホームページや入園案内・コンセプトブックのリニューアルの準備をしています。更に、50 周年記念誌や、せんりひじり幼稚園のこれまでの研究や歩みをまとめた本も発刊予定です。
そして先日、ホームページの制作会社の方のご紹介で、イラストレーターのミウラナオコさんに出会うことが出来ました。ミウラナオコさんの描くイラストはどれも素敵で心に響きます。「言葉にできない気持ち」をイラストで表現できる方で、私たちの思いにぴったりのイラストを描かれます。本や冊子のイラストの依頼をすると「一度どんな幼稚園か見てみたい。」とのことで、先週東京から見に来られました。ミウラナオコさんは、カメラを片手に、面白いものを見つけた時の子どものようなキラキラした目で、泥んこ遊びの足跡・いっぱい拾い集めたザクロの花・お団子の山・ちぐはぐに脱ぎ捨てた上靴などを「かわいい・かわいい」と言いながら撮っていました。そんなミウラさんのブログのコメントが素敵なので紹介します。

ミウラナオコさんのブログより・・・ひじり幼稚園で感じたのは「見守る存在のあたたかさ」全てからなーんかあたたかく見守られている感じがした。園の子どもたちも、その安心の中で「それぞれのかたちをした自分」を出しているんじゃないかなあ。自分の「好き」を大事にされるって大切なことだよね。ここ数年で、私がイラストや写真で発信したいと思っていたことは「自分が好き」と思える事の大切さなんだけど、せんりひじり幼稚園はそう思えるための「小さなきっかけ」にあふれている気がした。

「ドキドキ」

入園や進級して2週間経ちました。環境が変わるのは、大人にとっても子どもにとっても不安ですよね。最初は特にそんな子どもの不安な気持ちを大人がちゃんと受け止めて、「心配だったのね」「おかあさんといっしょにいたかったよね」「それがやりたかったのね」・・・と、代弁してあげたいですね。自分の思いを肯定的に受け止めてもらったことで子どもは心に余裕が生まれます。そして安心して夢中に遊べる物や場所を見つけていきます。今は、幼稚園のあちこちから先生たちの優しい「受けとめ言葉」が聞こえてきます。そんな中でいると、こちらまで居心地の良さを感じます。そして日に日に安定していく子どもたちを見ると嬉しくなります。
先日の委員決めでは、ご協力ありがとうございました。この一年の保護者集まりのスタートが、委員決めの集まりであることは関係づくりのハードルが高く、PTAの役員さんはこの日がうまくいくように綿密な打ち合わせをしてくださってて頭が下がります。希望通りにいかないこともあり、申し訳ない気持ちになりますが、そんな中でも、「私は違う係だけど、一緒に手伝うからね」と声をかけていらっしゃったり、「大変そうだから私が変わります」と言ってくださる方、「決まったからには、精一杯やりたいと思います。」と言ってくださったり、素晴らしい保護者の方々の言葉に感動しました。
私も我が子の学校での委員決めの時は、ドキドキでした。大変な役が当たってしまった時は大声で「ギャーどうしよう」と叫んでしまいました。すると、もっともっと大変なPTA役員の方に「こちらも協力しますので、宜しくお願いしますね」と、笑顔で言われ、叫んでしまった自分が恥ずかしくなりました。私よりずっとずっと大変な役に付きながらも、どんと構えているその先輩ママがかっこよくてまぶしく見えました。一番下の子の時は、校長先生から直接電話がかかってきて、迷った末にPTAの役員を引き受けました。仕事をしながら、上の子の受験も控えながらのPTA役員活動でバタバタしていた私を見て、息子はどう感じていたのでしょうか・・・。聞いてみると「忙しいのに自分の学校に来て仕事してくれているのが、メチャ嬉しかったで」と言ってくれました。
先日の委員決めの時、たまたま横で子どもたちのお世話をしていた米田亜里沙先生にも聞いてみました。3人兄弟の末っ子で卒園生の亜里沙先生。お父様は以前、PTA会長をしてくださり、お母様はPTA副会長や様々な委員を毎年のように生き生きとこなしてくださっていたのを思い出しました。亜里沙先生に「子どもの時の亜里沙先生から、PTAで忙しそうなお母さんを見てどう感じてた?」と聞くと、「子ども心に、お母さんが幼稚園に来てくれてPTA室で作業しているのを、横で遊びながら見ているのが、得した気分ですごく嬉しかったのを覚えてます。」と言ってました。
PTA 活動をこなしてくれるお母さんの姿は子どもの目に素敵な姿として写るのですね。
どうかこれから支えあい協力し合いながら、PTA活動を楽しんでいただけたら幸いです。

「愛された記録」

● 27年度終了・・・・愛された記録
早いもので今日で27年度の終園日を迎え、明日の卒園式を残すのみとなりました。3年前、泣きながら入園してきた子ども達が、明日は自信満々の笑顔で木の香りのする新しいホールから巣立っていきます。先日のPTA総会でもお話させていただきましたように昨年度から工事が続き、様々な面でご不便をおかけしましたことを大変申し訳なく思います。先日実施しましたアンケートでも、工事の影響で「5,屋外環境(園庭、裏庭等)」についての質問で・ふつう34.2%・よくなかった12.4%と非常に悪い結果となりました。しかし、そのような制限の中にあってもPTA活動や様々な面で園の教育活動をサポートしていただいたことに心から感謝いたします。一方、「1.せんりひじり幼稚園の教育について・・・」の設問でとてもよかった・よかったの合計が初めて100%という結果になりました。まだまだ、解決すべき課題や努力すべき点はあるものの園や先生達の子どもの対する姿勢を信頼していただいていたことにあらためて感謝いたします。本当にありがとうございました。又、アンケートの自由記述の中で先生達が書く「ポートフォリオの言葉が本当に嬉しかった。」、「宝物にします。」と書いてくださっている方が今年は例年よりもたくさんありました。先生たちにとってもポートフォリオはとても大切な思い出でがつまっていて、最近の先生達の姿として、最後にお渡しする前にひとりひとりのポートフォリオを読み返して子ども達が成長してきた日々を嬉しそう振り返っていたり、先生同士で語り合っている姿がありました。「お仕事(義務感)」ではなく、子どもの成長を「喜び(幸せ)」として向き合ってきた先生達の姿を見て園長としてひじりの先生たちを誇りに思います。そんな先生たちの愛情が詰まったポートフォリオなので、子ども達が大きくなって読み返した時に自分が愛されていたことを思い出して、またがんばろうという気持ちになってくれるんじゃないかなあと思います。世界にひとつのファイルですのでどうぞ大切にしていただければ幸いです。

● 工事のおじさんたち感謝の会
先日、体育館・ホールの完成を記念して設計・施工の関係者の方々をお招きして年長児と感謝の会を開催いたしました。子ども達から感謝の絵や手作りのレイをプレゼントして給食も一緒に食べていただきました。子ども達からの質問のコーナーでは
「何時間かかってつくったの?」、「どうやって木と木をつなげたの?」
というような質問から
設計士の方へ子どもから「絵をかいてくれてありがとう。これは何の木?」
設計士「バーチだよ」
子「どっからもってきたの?」
設「ヨーロッパっていうところだよ」・・
というようなやりとりもあり、お店屋さんプロジェクトを経験して(ものをつくる苦労を知っている(笑)年長ならではやりとりに成長を感じました。

● 27年度末アンケート集計結果 ※数字の上段は今年度の数値、下段は昨年との比較

1) せんりひじり幼稚園の教育についてはどのようにお感じになりましたか?

とてもよかった よかった どちらともいえない よくなかった
71.3% 28.7% 0% 0%
-3.3% +5.4% -2.1% 0%

2) 園の方針や保育の意図などはご理解いただけましたか?

とてもよく理解できた 理解できた どちらともいえない 情報や説明が不十分
58.1% 39.4% 1.5% 1.0%
+4.0% -2.7% -1.6% -0.5%

3) 園でのお子様の様子や成長はよく分かりましたか?

とてもよく理解できた 理解できた どちらともいえない 情報や説明が不十分
56.7% 39.7% 3.1% 0.5%
+3.7% -2.4% -1.8% +0.5%

4) 室内環境(おもちゃや教材、絵本を含む)はいかがでしたか?

とてもよかった よかった どちらともいえない よくなかった
44.1% 52.8% 3.1% 0%
+1.0% +8.2% -5.3% -4.0%

5) 屋外環境(園庭、裏庭等)はいかがでしたか?

とてもよかった よかった どちらともいえない よくなかった
16.6% 36.8% 34.2% 12.4%
+1.0% +8.2% -5.3% -4.0%

6) PTA活動はいかがでしたか?

大変楽しめた 楽しめた どちらともいえない 楽しめなかった
22.8% 56.0% 18.7% 2.6%
+1.0% +8.2% -5.3% -4.0%

7) 給食はいかがでしたか?(メニュー、当番など)

とてもよかった よかった どちらともいえない よくなかった
47.4% 45.9% 6.2% 0.5%
+7.2% +2.5% -6.5% -3.2%

8) 送迎についてはいかがでしたか?(子どもにとって)

とてもよかった よかった どちらともいえない よくなかった
52.5% 39.3% 7.7% 0.5%
-7.5% +6.7% +0.3% +0.5%

「保護者力」

先日は、PTA総会・お別れ会とご参加いただきありがとうございました。
PTA役員の皆様には、様々なPTA活動を企画運営して下さり感謝の気持ちでいっぱいです。大変な一年だったかと思います。きっと親としての人生の中で「よくやった」と自分に勲章をつけたくなるような一年になったと思います。
また、親睦委員やカーニバル委員をはじめ各委員活動の方々もたくさんのお力を貸して下さりありがとうございました。PTA総会では、保護者席から「お疲れ様~!!」の声と共にキラキラのうちわを振ってのねぎらい応援団・・・。こんなステキなPTA総会(ひじりの伝統になりつつありますが)・・・他の園では聞いたことないよなあ。ジャニーズのコンサートみたいにキラキラのうちわで「おつかれ ~!!」って言われたら嬉しくてPTA役員さんも涙&笑いでしたね。
一年間の行事を振り返っても、保護者の方がそれぞれの役割を担って下さり、ありがとうございました。実際はしんどいことや、やりにくいこともあったかもしれません。それぞれのご事情もあり、もっと参加したくてもかなわなかった方もおられたかと思います。保護者の係は一人一役のお約束。その上給食当番や個人懇談・学級懇談・行事・・・と出番も多く、お時間の調整も難しかったかもしれません。そんな中でもご家族で協力して下さったり、できる範囲でご参加下さり、本当にありがとうございました。
何度も言いますが、うちの園の自慢の一つが保護者の方々です。昨今、他園では省略化されている保護者活動ですが、せんりひじりでは保護者の意識が高く、しかも楽しんで参加して下さることに驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。お別れ会での企画、手の込んだ素晴らしいアルバム・・・大変だっただろうなあとお察しします。先日の年長組のお別れ会では、笑いあり涙ありの驚きの企画。親睦委員さんの中から「もう、やりきった!!」と完全燃焼のお声も聞こえてきました。お別れ会で出たひじりランチを「もうこれで幼稚園の給食食べるの最後やから!!」と、お母さん方が次々お皿を持ってお代わりに並んでいたことも聞いて大笑でした。ステキな保護者の皆様と出会えたことに感謝します。
子どもたちは、自分たちのために親が力を合わせて楽しそうに活動している姿を見て、大切にされていることを感じたはずです。来年度も、保護者の皆様と手を取り合って、子どもたちを幼稚園と家庭の両面から支え、共に「子どもの幸せを願い、子どもの幸せを図る」そんな組織でありますように。

「発表会で育つ非認知能力」

子どもたちの生き生きとした表現、楽しそうに演じる姿はとても素敵でしたね。私がひじりらしくて素敵だなと思ったのは、何かのアクシデントや想定外のことが起きても、その場で子どもが自分たちなりに考えて動く姿。担任の先生はピアノの前にいるから、劇を進めるのは自分たち。そんな中で、素敵なやり取りをたくさん見ることが出来ました。
劇の途中で、マットに戻るのを忘れて真ん中で立ちすくんでいる子に気付いて、迎えに行ってあげ、しかもそっと体に手を添えて連れてきてあげたり・・・大勢のお客さんを前にして緊張してせりふがなかなか言えない子の手を繋いで一緒に小さな声で言ってあげたり・・・自分たちでタイミングよく大道具を出し入れしたり・・・出番を忘れている子に声をかけたり・・・裏方の先生たちが出す大道具の場所を細かく「もう少し前に出して」「すぐ引いて」と指示し てくれたり・・・友達のお面が取れかかっているのに気づいて「直して」と近くにいる先生に教えてくれたり・・・。
生き生きとした発表の中に、そんな頼もしい姿も合わさって、たくさんの育ちを見ることが出来ました。
根気よく劇を作り上げていく力・役になりきって表現する力・道具を工夫して作る力・友達とタイミングを合わせて出ていく力・アクシデントに対応する想像力と判断力と行動力。
今、子どもたちに一番育ってほしい非認知能力が、発表会までのいろんな営みの中で育っているのを感じます。担任たちが、子どもたちにどうしたいのか聞きながら話し合いながら進めてきたことが、様々な形で子どもたちの育ちとなって表れたことも嬉しく思いました。
発表会中に、舞台の上の子どもの姿と観客席の保護者の方の表情をつい交互に見てしまう事があります。子どもの生き生きとした表情と、それを見ている保護者の方の笑顔や涙を見ると、喜びと感動が伝わってきて、そんな保護者の方の姿にも涙が出そうになります。
「表現」って受け取り手の肯定的なまなざしがあってこそ、出せるものなのだということを改めて感じました。温かく見守って下さり、ありがとうございました。

「空の巣症候群?」

私事ですが、3 人の子どもの一番下の息子が成人式を迎えました。
1才になるまで1年間毎日夜泣きをする息子を、夜中に抱きあげて寝かしつけ、それでも朝は定時に起きて主人のお弁当を作って送り出し、上の二人の小学校と幼稚園の準備や世話をし、仕事に出かけ、自分が寝ているのか寝てないのか考える暇もなく、食事の支度、お風呂に入れて洗濯をして、絵本を読んで寝かしつけて・・・。
24時間営業の母業に疲れていたとき、6才の娘に「ママはサンタさんに何をお願いする?」と聞かれました。「みんなが元気でいることかな」と表向きの返事をしながら、内心「ゆっくり寝たい。友達とゆっくりしゃべりたい。味わいながらご飯を食べたい。時間を気にせずに買い物がしたい。美術館に行きたい。コンサートにも行きたい。そう・・・自分のための時間がほしい」と思っていました。
3人の子どもたちが、それぞれ違う学校に通っていたときは、運動会も3回、発表会も3回、それぞれの友達を招いたり、どこかに連れて行ったり、お稽古の送迎やサッカーの試合会場まで送迎したり、「おいしい!」と言わせたくて張り切って食事を作ったり、学校の委員やPTA役員まで・・・親としてできることに全力投球してきました。子どものお陰で、親としての豊かな経験をたくさんすることができました。
そして、ふと気がつくと、入学式も運動会も発表会もなくなり、サッカーの試合に連れて行くこともなくなりました。上の二人は関東の大学に行き、張り切ってご飯作ることも少なくなり、あっという間に卒業・就職し・・・親としてできることがどんどん減り、とうとう一番下の子が成人式を迎えました。ふと気がつくと母をそんなに必要としてくれなくなったのです。
そう、成人するというのは、自立するということ。親の手助けを殆ど必要とせずに生きていくということ・・・。それが記念すべきことなのに、急に寂しさがこみ上げてきます。
もっとゆっくり絵本の時間を楽しめば良かった。もう少しゆっくり公園で遊べば良かった。もっとじっくり話を聞いてあげれば良かった。もっと他の言い方で言い聞かせればよかった。もっと子どもと共にいた時間を大切にして、丁寧に子育てすれば良かった・・・そんな思いに襲われます。でもそんなことを思っても過去に戻ることはできないので、これからは社会人の先輩として、肯定的に見守っていくことが残された役割でしょうか。
こんなつたない子育て経験をした私ですが、これからも保護者の皆さんの子育ての応援をし、お役に立てたら嬉しく思います。まだまだと思っても二度とこの時間は戻ってきませんよ。

「子どものつぶやきから始まる保育」

先日、大阪府の私立幼稚園連盟企画の海外視察研修に行かせていただきました。
急激に発展しているシンガポールですが、幼児教育に非常に力を入れて2013年にSPARKという評価の枠組みを導入したことにより保育の質も急激に向上するという実績を積んでいました。5つの幼児教育施設を視察し教育省のトップのレクチャーを受ける事も出来、大変刺激を受けました。主任の小野寺敦子先生と一緒に参加しましたが、二人であやこや言いながら、せんりひじりの保育と比較しながら幼稚 園を見ることができ、参考になりました。
室内環境や屋外環境も工夫されていて、子どもが作った作品の見せ方がオシャレで、理念や保育内容の伝え方もわかりやすく、保護者の方も理解しやすいだろうなと思いました。一番すごいなと思ったのは、子どもたちの姿やつぶやきから始まるプロジェクト保育です。例えば、園内に蜂が巣をつくり「蜂蜜を食べたい」という子どもの声がきっかけで、蜂の生活や巣の構造を調べ、巣からはちみつを収穫しクッキーを作ったという素敵なプロジェクト活動や、嵐で倒れた木をそのままにしていたら子どもたちがそこで遊び始め、「うちのお父さん力持ちだからこの木を運んでくれるよ。」という子どもの声がきっかけとなり、保護者の方々の協力で素敵な森の遊び場に発展していったり・・・。子どもの考えやつぶやきを大切にしているところはせんりひじりと同じだなと思いました。違うなと感じたところは、話し合いの機会が断然せんりひじりの方が多いということです。個々の力を伸ばすと同時にみんなのアイデアや考えを結集して関係性を大切にしながら話し合ってモノづくりをしている点でしょうか。もしかしてとても高度なことを しているのかも・・・と感じました。
バナナ組では先生と子どもたちが段ボール紙で美味しそうなロールケーキを作っていました。すると子どもの中から「カフェやさんやりたい」の声が。それから、お金を作り始める子、お金を入れるレジを作る子、そしてスーパーまで作り始めて・・・子どもの発想はどんどん広がっていきます。先生は子どもたちの製作が広がっていくように様々な素材を用意します。一方、年長組では、クラスで話し合いをしながら一つのお店に仕上げつつあります。失敗しながらもアイデアを出し合いながら進めていく姿は頼もしく、 育ってるなあ〜を多々感じます。
先日の園内研修では、どこまで子どもの考えを待てばいいのかなどを考えました。子どもたちからどんな考えが出てくるのか、いつ出てくるのか予測しながら先生たちは環境の準備をしておきます。子どもが何を考えているかそれにどのように向き合えばいいのか・・・正解はないのですが、つぶやきを聞きながら、懸命に見つめ考えている先生たちがいる。そんなまなざしの大人がいる環境がステキだなと感じました。
ご家庭でも子どもの興味に合わせて、物を用意をしたりその場所に連れて行ったりされている話をよく聞きます。保護者の方も大変だろうなと想像しますが、労力や時間を惜しまずに子どもの興味につきあってあげることが必ず子どもが育つ糧になっていると思います。子どものために工事現場で数時間もじっとミキサー車を一緒に見ていたり、虫を探しに山の奥まで入ったり・・・自分が今までしなかった経験を親になって初めてすることもあったりしますよね。親って健気な生き物だと思いませんか。

「温かい眼差し」

運動会は晴天に恵まれ気持ちのいい一日になりましたね。工事のため手狭になっているに も関わらず、保護者の皆様が、譲り合い我慢してくださってご協力をしてくださったおかげで、子どもたちは伸び伸びと頑張ることが出来たと思います。年少組の解散が例年より早く、「最後まで見たかったのに・・・」というご意見や「子どもが疲れていたのでちょうどよかった」というご意見等をいただきました。皆様のご意見を参考に、来年度に向けて再検討していきたいと思います。
来賓の方々やお客様から、「子どもたちが生き生きしている」「この幼稚園の子はなんでこんなにく走れるんだ」などのご意見を頂きました。他に「保護者の方が、とてもマナーが良くて協力的」とのこと。「自分の子の学年が出ているときの応援はもちろん、ほかの学年の時も見守っているのがすごい」とのことです。他の幼稚園では、そうでないところが多いそうです。自分の子どもだけでなく、ほかの園児の様子も見守るそんな姿勢が素敵です。また自慢したくなりました。
運動会後の子どもたちの思いは様々です。負けた悔しさが残っている子もいれば、思いっ切りリレーや組体操が出来て気分爽快の子もいるでしょう。もう少しこうしたらよかったと振り返る子もいるかもしれません。お家の人が見に来てくれてただただ嬉しくて終わった子もいれば、大勢の人がいることで心がざわついて落ち着かなかった子もいるでしょう。それぞれが大切な経験として自分の中に取り込んだと思います。当日も大切ですが、子どもがうんと成長するのは運動会を迎えるまでの途中の活動の中で・・・ですからね。
子育てに力が入れば、親はつい欲張って我が子を見てしまうことがあるかもしれません。私も子育て中はそうでした。今、性格の違う3人の子どもが成人して思うことは、子どもの欠点だと思っていたことが、大人になると生きる力となって発揮される場面があり、「あの時のこだわりはここにつながっていたのか・・・」と数年後に気づかされることがあります。
今週から秋のクラス懇談会が始まります。保護者の方同士のグループワークの中で、違う角度からの意見に気づかされることもあると思います。「そうかそこはそんなにこだわらなくてもいいことなのか」とか「そう考えることもできるのか」とか、子育てのヒントになることが見つかるといいですね。運動会の時のようにお互いの子どもや子育てのことを温かく語り合って下さいね。

「社会情動的スキル」

長い夏休みが終わり、子どもたちは口々に「恐竜見たよ」「イルカ触った」「おばあちゃんと遊んだ」「飛行機乗った」・・と、夏の思い出を話してくれました。
工事の関係で、長い夏休みになりご迷惑をおかけしました。「費用が安くなってから旅行に行けたからよかったわ」と言って下さる保護者の方もいましたが、「夏休みに入って3日目からずっと、幼稚園行きたいって言ってましたぁ・・」という保護者の方もいて、長い休みの間、大変だったこととお察しします。
我が子が小学生の時は、夏にしかできない「自由研究」の宿題を子どもと一緒に考えるのが好きでした。自分の身の回りの不思議を調べたり、足を運んで話を聞いて、写真と共に記録したり、自分なりの考えをまとめて考察を書く仕上げを見守りながら、問題集よりもこんな自主的な学びの方が、子どもの力をうんと伸ばしてくれるような気がしていました。
幼稚園では、カーニバルが終わる頃から年長組の子どもたちがお店屋さんごっこに取り組みます。何のお店にするか話し合うところから、何の素材を使ってどんな形に 作るか考え話し合い、うまくいくように試行錯誤を繰り返し、失敗を乗り越えて、お店をオープンさせます。運営がうまくいかないとまた話し合い、役割を自分たちで決めていきます。主体的に生き生きと活動する中で育つ力が素晴らしくて、いつも人に伝えたい気持ちでいっぱいになります。
そんなお店屋さんの取り組みで育つ様々な力が、今、OECDで幼児期から育てることが大切だと提唱されている「社会情動的スキル」にぴったり当てはまるのではないかと思いました。そして、去年の年長の担任たちと、場面ごとの子どもの育ちを検証してみました。子どもたちの会話の一つ一つからその思いや力を丁寧に追うことで、子どもたちの育とうとしている力が浮き上がってきます。そんな思いを知ることで、見通しを持つことができ、子どもの育ちを待ちたい気持ちになりました。
そして、8 月に福島での「日本幼児教育実践学会」で発表してきました。「こんな楽しそうなお店屋さんごっこを見たのは初めてです」「子どもの育つ力を言語化することでわかりやすい」と高評をいただきました。又、その他、園内研修でも、先生たちみんなで子どもの育ちを語り合い、暑い夏を終えました。
実りの2学期に備えて準備オッケーです!!今学期も宜しくお願いします。

「向き合う」

いよいよ夏休みに入ります。いつもより子どもと過ごす時間が長い分、どこに連れて行こうかなぁ、何をしようかなぁ、楽しみなような、ちょっとめんどくさいような・・・そんな気分の日もありますよね。
「この子の人生の中で、この一瞬はもう二度と来ないんだ。」と、子どもを育てていときにふと思ったりしました。親が子どもと一緒にいられる年月は限られてて、大人になって自分の力で生きていく年月のほうがずっと長いですよね。その長い月日を、小さいころに親にもらった愛情と、親と経験して貯め込んだ感性を食べながら生きていく・・・そんな風に思うと、一緒にいることのできる短い月日を密度の濃い時間にしたいと思ったりしますね。
でも特別なことをしなくても大丈夫。夏休みは、いつもよりたっぷり時間がある分、その時間を親子で向き合って楽しむことが、目に見えない心を豊かに育てることになります。わたしたちがよく言う「心を育てる」というのは、社会情動的スキル(不思 議だな、なぜ?やってみたい、おもしろそう、がんばろう、試してみよう、悲しそう、 困っていないかな・・・など)の様々な心の動きをたくさん経験し、また共感してもらうことによって育ちます。そして、学ぶ力はその社会情動的スキルと共に育つと言われています。
年長組が7月15日から一泊二日で、能勢にお泊り保育に出かけます。能勢の古い民家に泊まります。土間や縁側があるような日本家屋です。そして、近くの山や川に行って自然と触れ合います。子どもたちにとっては寂しがる暇がないほど刺激にあふれた2日間です。山や川で目に入る風景の不思議に気づくためのしかけや関わりがあったり、少しの「できるかなあ」にチャレンジしたり、見つけたことをみんなで教えあったり、共有したりします。自然の中での危険性や管理が難しいことでレジャーランド等での宿泊保育にするところもあるようですが、自然の中で子どもの感性を育て ることがその後の人生の大きな力になると思えば少しの労力も惜しくはないですね。
私たち職員は夏休みに様々な研修会に行きます。そして今年も「日本幼児教育実践学会」で実践発表をします。自分たちの学びの機会でもありますが、子どもたちの幸せな育ちのためにみんなで語り合う暑い夏にしたいと思っています。 皆様も健康に気を付けて、充実した夏をお過ごしください。